すもーるこっとん

 

寒波が来るって聞いて予定1日早めて盛岡に向かった。次の日デートに行くかのごとくバッチリ化粧して、大好きな友人が乗ってくる銀河鉄道の改札の前。自分の地元に大切な人が来てくれるのが何よりも嬉しいから今回はどこに行こうか限られた時間でずっと考えて、大好きなパン屋さんに連行すると決めた。そんなパン屋さんのお話を書くね。

 

 

 

 

 

 

パン屋さんが好き。仙台に来て一番最初に3年住んだ家は最寄駅近くに小さいパン屋さんがあって、お気に入りは米粉パン。3人入れるかどうかの狭いお店で、凝ってないパンが置いてあるのが魅力なのです。土曜日のお昼前に買いに行って帰り道の公園でジャムパンを一つ食べる。

 

 

 

 

地元で好きなパン屋さんは、某大型ホームセンターの駐車場の隣に山吹色と深緑の出で立ちで「雑貨屋さんです!」みたいな顔して立っている。色が派手、ディスプレイも派手、お店の前はカントリーミュージックが軽快に流れている雑貨屋さん。ふふふ。まだ開店して歴史は浅いけれど、SNS社会の現代で気付けば友人のTLに流れてくる日も多い。お店の前には文字がびっしりの黒板と、ジェラートの看板。はい、この時点でニヤニヤ止まらない。引き戸に手をかければ心臓がバクバクしてきて隙間からもれてくる焼けた小麦の匂いに深呼吸すーはー。わたしが日本で一番好きなパン屋さん。

 

店主夫妻は多才でキャラが濃い。アラサーだと思う、見た目は夏はフェス行って冬は雪山でウェイしてそうな夫婦。パン屋さんの他に農場で生き物を育てていて、畑で野菜を作っていてその野菜や卵でパンを作る。夏には農場で24時間イベントを企画している。キャンプファイヤーを囲んでみんなでワイワイ歌って踊って、朝はお店のシェフがご飯を作ってくれる素敵イベント。愛車は農耕機。

 

 「シェフの気まぐれグラタンパン」「キセキのメロンパン」「贈るパン」「ありが豆のパン」「ポテトを食べるパン」「ぼくのクリームパン」はい、名前カワイイ。学級通信みたいに手書き&コピーでお店の最近の話を配布する日もある。惣菜パンが多い店内は定食屋さんみたいな、包丁がまな板を叩く音とオーブンのタイマー音。目移りしてると奥から店主がやってきて「お!帰ってきてたんすか!おかえり。」と話しかけてくる。その流れでバイトさんだった接客が店主さんに変わって、この新作が、もうすぐ何が焼けるから、次のイベントが、わたしの家族は元気かって。話してるうちに別のお客さんに取られると困るからまずレーズンパンを引っ込めてもらって、夏は「丸パン」のブリオッシュ生地にジェラートを挟んで食べる。冬は冷蔵庫には入ってる「コーヒーあんぱん」「紅茶あんぱん」。それから「クロックムッシュ」もあったら必ず。チーズが美味しいパン屋さんのクロックムッシュは耳元まで紳士的で、バリッと決めた焼き色にめろめろ。来世はクロックムッシュと結婚してクロックマダムになるって決めている。

 

 

 

どのパンも美味しいのはわかってる。でも一番はさっき引っ込めてもらったレーズンパン。しっとりもちもち、レーズンがじゅわじゅわ。焼きたてのレーズンパンをむつむつちぎって食べるのにはまると気付いたら1斤ぺろっとなくなってて、でもトーストするとそれはそれで最高(つまり2斤買う)。厚切りでザックリもちもち。薄切りで表面がガリッとすると塩味の効いたバターがレーズンと混ざってじゅわじゅわに拍車がかかる。贅沢するときは、バターと、クリームチーズとはちみつ。そんでペッパーをミルでガリガリする。幸せを具現化したような味。気付けば片手にワインね。素晴らしい!こんなパンを毎回作れるシェフさんは魔法使い。厨房の奥でいつももくもくとパンを焼いている。たまーに、肩に焼きたてパンを担いでそっとカウンターの前を通って大きな手でパンを並べる寡黙で背が大きい優しそうな魔法使いなのだ。パンは生き物だから、作り手の感情が出てくる食べ物だなって思う。TO GOするときは温めてくれて分けやすいように切ってくれて、そのパンの一番魅力を出せるように楊枝をつけたり。その小さなひと手間が日本一と思わせるところなのかも。実家がなくなっても、この地を地元と呼んで帰るのは「おかえり」をいってくれる人がいるから。

 

すでに帰りたい。

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