たにんなら

ホテルを抜け出して、川沿いを散歩した。缶ビールを片手に、晩御飯でいっぱいになったお腹をさすった。ずんずんと歩いていくと真っ暗な無人駅がある。田舎らしい星空を見て星座の話もした。さっきより随分と饒舌だなと思った。それから少し歩いて、結婚の話もした。こないだの連休の話だ。

 

 

 

 

 

喧嘩をしたことがないくらい大好きな彼。7年ぶりに会った。前回は進路と部活の話をしたから、時の流れを感じる。大学の時からお付き合いしている子と随分と長く続いているようだから、このまま結婚するんだと思っていたが、別れることで決意は固まっているらしい。それなりに、他の人とも会ってみたりしているようだ。「結婚」をしたくないと彼は言う。なぜかと問うと「一緒に住みたくない」「自分の時間を取られたくない」と教科書のような、つい数ヶ月前まで隣にいた人と重なる回答におかしくなってしまう。別居婚は考えないの?と聞くと、そういう考えはなかったなあと答える。全く違う世界を生きているように思えた。間髪入れずに「なぜうまくいかなかったの?」と聞かれた。「結婚」したくないんだって。でもそれは、”彼”なりの優しさだったんだと思うと答えた。酔うねえ。

 

 

 

 

弟も連れて街に出てみた。祭りを見に行こうと誘ったものの、どこに山車がいるのかもわからず喫茶店に入る。祖母宅の周りは住宅しかないから、ひどく時間を持て余す。私ですら、予定を入れてなるべく街に出るのだから、土地勘のない彼はひどく息がつまるだろうなと思った。

ビールを片手に祖母宅の方に向かってダラダラと「給水ポイント」を探しながら歩く。弟が行きつけに立ち寄る間に「散歩」と称して一杯飲む。歩く。今度はここで飲もうか、帰りにケーキを買おうか。一回、ここに酒を置かせてもらって、このお店に入ってみようか。喫茶店良かったなぁ、また行きたい。楽しそうにする彼と、酒に飲まれてハイになる弟。大人になるっていいなあ、と思う。別れたらお金が浮くなあ。と彼はまた言う。別にこんな風なデートでいいじゃんと私は言う。そうもいかないんだよ、早く別れたい。でも話したくないと言う。わがまますぎる。弟ともそれなりに何かを話したんだろう。彼らの視点での恋愛は私にはわからない。彼は、盛岡は美人が多いとすれ違う女の子を見て毎回言う。来てから5人くらい好きになってるとはにかむ。悪い男だと思う。その優しい人柄で何人でも捕まえられるだろうに。

 

スーパーで母と待ち合わせをして、トイレでゲロを吐く弟を待つ。「25歳までに酒の飲み方覚えてくれればいいな」とこぼすと「あいつはバンドマンだからあれでいいんだよ。かっけーじゃん」と返ってくる。私は彼のこういうところが好きだ。